占いと私(4) ~会社に行きたくない!占い師の職場見学~

コラム
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「あなたには、占い師が向いていますね」

またか。

去年の春ごろ。
5回目占い師による占い師が向いている宣告をされ、私は愕然とした。

じゅりえは仕事を辞めたかった。

ずっとIT企業に勤めている。
仕事が嫌になったとか、人間関係が嫌になったとかではない。

でも、辞めたい。
理由はたぶん多くの人が思ってることだと思う。

「週に5日も会社に行きたくない」

これに尽きる。

じゃあ、自分のペースでできる仕事を探すか!

ところがここからが問題である。
仕事にしたいようなことがない。

ITはもうごめんだ。
実はテクノロジーには少しも興味がない。
事務職希望で入ったのに、文系なのに、なぜか技術職に配属された。

まあいいか、とやってみたら意外とできた。
できたから続けてみたけど、7年経ってもやっぱり週に5日も会社に行きたくなかった。

そこで私は、おすすめの職業を占い師に聞いてみることにしたのだ。

占い自体は、20代半ばあたりから、年2回くらいのペースで通っていた。
だけど、悩みを相談したことはなかった。

「人に相談するくらいなら自分で全部決める。」
私はそういう女だ。
あまり人の話は聞いていない。

悩みがないのに占いに行っていた理由は、単純に占いが好きなのと、
あとは「職場見学」だ。

じつは、その頃(20代半ば)にはもう自分でタロット占いをしていた。
主にメール鑑定で人に占いを提供するということも経験済みだ。

占いを本業にするつもりはなかったが、独学で占いを勉強していた私は、
せめてプロの占いを体験することでスキルを高めようと考えていた。

職人は「技を見て覚えろ」と言うではないか。
占い師が職人なのかはわからないけど、そんなつもりだった。

悩みがないのでいつも「いまの私へのアドバイスをください」みたいな、
ぼやっとした質問をしていたけど(こういう質問は意外と歓迎される)、
やっと悩みができたので、私は喜々として占いの館に足を運んだ。

数か月で5人ほどの占い師に、私におすすめの職業を聞いた。
占星術、手相、数秘術、霊視などなるべく異なるジャンルで、
いままで鑑定してもらったことのない占い師を選んだ。
そのほうが勉強になるからだ。

その結果が冒頭の「占い師が向いていますね」である。

もちろん、疑り深い自分の性格をよく知ってるから、
「趣味で占いをやっています」とか、誘導するようなことは一切言っていない。

そんなことをしたら、(またまた~!占いやってるって言ったからでしょ)って
なるのは目に見えてるので、意味がなくなってしまう。

ちょっと試しているようで申し訳ないが、やっかいな私の性格を考慮した結果である。

それなのに、霊視をする人にいたっては

「あなた、“こっち”の人ですよね。
 私に聞かなくても自分でわかるんじゃないの?
 うしろの人(守護霊)がそう言ってますけど

と不思議そうに言ってきた。

守護霊による情報漏洩である。

その占い師は「そのうち本格的に占いの道に入ると思いますよ」とまで言った。

自分でもその選択肢はわかっていたけど、あまり乗り気ではなかった。
占いを悪用する人や、占いに依存する人とかかわるのが嫌だったし、
自分もそう見られるのが嫌だった。

そもそも、占い師になる方法がよくわからない。
その道に入るよと言われても、どうやって入るの?

タロットは独学だから、師匠はいない。
なるだけならなれるかもしれないけど、本気でやるなら、もっと技術を身につけたい。

本当かどうかは知る由もないが、なんかすごそうな占い師のプロフィールを見てみた。

「生まれながらにして鋭い霊感を持ち…」
霊感、持ってない。

「家系より受け継ぎし…」
ごく一般の家庭に生まれてしまった。

「交通事故で生死をさまよい…」
生死さまよってないや…。

他にも、「〇年にわたる〇〇での修行を終えて…」とか、「〇〇先生に師事し…」とか、
それってどうやって見つけるの??とわからないことだらけ。

どこでどう勉強すれば「一人前の占い師」と胸を張って言えるんだろう。

5回目の「占い師が向いています」を聞いたあと、
私はその足でなんとなくパワーストーンのお店に行った。
なんだかそわそわして、まだちょっとだけ不思議な世界に関わっていたい気分だった。

そのお店には小さな占いスペースがあった。
比較的安い値段で20分占いをしてくれるらしい。
そっと覗いてみたら、人のよさそうなおじさんと目が合った。

男の人にはあまり見てもらったことがない。
ちょっと好奇心がそそられた。
挨拶をして、その日2回目の占いを申し込んだ。

その相談では、初めて最初から何もかも話した。

会社を辞めたくて、自分にあった仕事を見つけたい。
でも、占いに行くと必ず占い師が向いてると言われる。
タロットはかじってるけど、強い霊感があるわけでもない。
そもそもどうやって占い師になるのかわからない。

おじさん占い師はふんふんと聞いて、カードを引き始めた。
カードをめくった瞬間「ほぉ~~」と言った。

「いや、たしかに占い師は向いていますよ。非常に向いている」

今回は最初から情報を出してしまったので、
(ほら~~それっぽいこと言う~~)と思う私。

その表情を読み取ったのか、おじさんは一冊のノートを取り出した。
どうやら、いま引いたカードの解説ノート(自作)らしい。

なにそれ企業秘密じゃないの?見ていいの?とわくわくする私。
「鋭い感性、霊感、先を見る力、新世界に飛び込む」みたいなことが書いてあったと思う。

「それでね、これとこれを組み合わせると
“占い師の素質があって、その道に入ろうとしてる”って意味になるでしょ」
と解説してくれた。

たしかに。そんな気がする。

「でも、私には占いの先生もいないし、占いの話ができる人すらいません。
 〇〇さんはどうやって今の占いにたどりついて、どうやって学んだんですか?
 どうやって占い師になったんですか?」

と、私は率直な疑問をおじさんにぶつけてみた。

もはやこれは占いではない。ただのインタビューである。

しかしおじさん…というのもいい加減失礼なので、山田さん(仮)とする。

山田さんは嫌な顔ひとつせず、自分が占い師になった経緯や、
自分の勉強方法などをひとつずつ話してくれた。

途中で時間終了を知らせるタイマーが鳴ったが、それを止めて、
「延長料金は取らないですから」と言って、話し続けてくれた。
すっごい良い人。

「じゅりえさんはなぜ占いをしているんですか?」
と山田さんは私に聞いた。

私はちょっと考えて、こう答えた。
「自分にできることで、人の心に寄り添う仕事がしたかったから

私は、もともとカウンセラーになりたかった。
自分が親子関係で苦しんでいたから、同じように苦しんでいる人の助けになりたいと思っていた。

だから大学では心理学を専攻した。
だけど、いろいろあっていまいち覚悟を決められず、普通に就職したのだった。

でも、やっぱり誰かの心に寄り添う仕事にはずっと憧れがあった。
使命感のようなものさえ感じるのは、どこかに昔の私がいるかもしれないと思うからだ。

それに、占いと向き合うことは自分の心と向き合うことだった。
占いを通して誰かの心と関わりながら、人生について考え、自分の心と向き合う。
自分の心と向き合い続けることが、私が生きている意味のように感じていた。

だから私は占いをするのが好きだった。

そんなことを、山田さんと話しているうちにはっきりと自覚していた。
私は「占いをやりたくない」理由ばっかり見て、「占いをやりたい」理由を見落としていたのか。

山田さんはうんうん、と頷いた。

「占い師って、それがいちばん大事なんですよ。
 お金とか、名誉じゃないんです。
 だからあなたは占い師に向いているんです」

会計を終わらせてお礼を言うと、山田さんは別れ際にこんなことを言ってくれた。

「このお店で”占いをする側”になったらどうですか?オーナーを紹介できますよ。
 あと、雑談ならいつでもどうぞ。お金は結構ですから」

占い師になる方法、すんなり見つかった…!!

じゅりえ

次回、「占いと私(5) ~とか言って、マルチ商法の勧誘なんじゃないの?~」

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