「虐待された人は子供を産まないほうがいい」について私が思うこと

コラム
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「親に虐待された人は自分の子供にも虐待するから子供を産まないほうがいい」という意見をたまに見る。

最近も何に対するどこでの発言かは知らないけど、
「こんなこと言っている人がいる!」とTwitterで怒っている人を何人か見た。

「親に虐待された人は自分の子供にも虐待しやすい」
実際、心理学では虐待の要因としてこういった虐待の「世代間伝達」の研究はよくされている。

私は専門家ではないので、現在どういった結論がつけられているのかはわからないけど、学生時代、心理学の講義で「虐待は連鎖する」という言葉を教授の口から聞いたときの胸に大きなつららが突き刺さったような感覚は今でも覚えている。

私のように虐待を受けて育った者にとっては、重くのしかかる言葉だ。

(しかし、研究によっても違うけど世代間伝達する割合は当時30%程度だったと思う。
 当然だけど、みんながみんな親と同じことを繰り返すわけではない。)

冒頭のセリフを誰かに言っている人は、虐待に関する心理学の文献を読んだんだろう。
え?読んだんだよね??

心の超繊細な部分を土足で踏みにじられたら、怒るのも当然だ。

なかには何も考えないで子供を作り、生まれてきた子供を虐待する親もいるかもしれない。
それはその人が虐待されてようがされてなかろうが起こりうる。
確率で言えば、虐待されて育った人は人格形成に影響が出るので、やっぱりそれは世代間伝達があるという話になるんだろう。

だから冒頭のセリフはそういう「何も考えてない人たち」に向けられたものかもしれない。
でもね、そうじゃない人たちがいっぱいいるんだよ。ナイフ振り回しすぎ。

言葉のナイフを振り回す通り魔が多い。

ナイフが危ないことを知らないのか?
危ないのを知っていて振り回しているのか?

そういうことを言う人もまた、虐待されてきた人という印象を受ける。
他人が自分の親みたいに見えたり、子供を産まないと決めた人なら、自分が否定されたように感じるのかもしれない。

親から過干渉されて育つと、自分と他人、他人と他人の境界が危うくなりがちだ。

それとも、どこかで聞きかじったことを振りかざしただけの人もいるのだろうか。

これはすまん理解できない。
心が思春期なのか? 早く大人になれるといいね。

どちらにせよ、正論(もどき)を振りかざして他人の人生に干渉しようとする様…。
それって毒親がやることと同じ。
私のなかでそれは「言ってはいけないこと」に分類される。同類になっちゃうから。

まあ、心ない発言をする人の話は置いといて。
「虐待されて育ったから、自分も虐待するかもしれない」と思っている人は結構いるのではないだろうか。私もそうだ。

おそらく、虐待されてきた多くの人は、子供を持つことについて葛藤していると思う。

私も子供を持つかどうするか、ここに書ききれないほどの葛藤を繰り返してきた。
葛藤して検討して、この夫とならまともに子育てできる、と判断した。

だけど、「自分が虐待するかもしれない」って緊張は今もあるし、
これからもずっとこの気持ちを抱えて子育てするんだろうなと思っている。

だから、私は私と同じように葛藤している人に思っていることがある。

葛藤した結果、子供を持たないことを選んだ人。
あなたはきっと、とても聡明で優しい人だ。

だって、まだ会ってもいない子供を幸せにできるかどうか、真剣に考えたのだろう。
自分の幸せより、子供の幸せを優先したのだ。簡単なはずがない。
子供がいなくても素敵な親だと、私は思う。

葛藤した結果、自分も子供を持つことを選んだ人。
あなたはきっと、自分と自分の親が違う人間であることを理解している。

自分の心の問題と向き合って乗り越えるという、厳しい道をあえて選んだ。
親になんか自分の幸せを壊されてたまるか、って戦ってきた人だ。

戦うことを選んだあなたには、きっと虐待の連鎖を断ち切ることができるはず。
あなたとあなたの親は違う人間なのだから。

私もこっちを選んだ。
だから今のは私が誰かに言ってほしいメッセージだ。

最悪なことを親からされてきた私たちは、同じ道をたどりやすくもあるんだけど、
「子供にしてはいけないこと」も人一倍よく知っている。
だから、理性と工夫でコントロールすることができるって信じている。

これからの道のりが長すぎて、結果が出るのはずっと先だし、何度も不安になる。
ついイライラして、やっぱり自分も憎むべき相手と同じ穴の狢(むじな)なのかと、消えたくなるときもある。

自分がされてきたことを思い出しながら育児をするのはきつい。でもがんばってる。
まだスタートしたばかりだけど、今のところまあまあいい感じだ。
娘は自分が家族のなかでいちばんえらくてかわいいプリンセスだと思っている。
それでいい。

困ったときは専門家に頼ることも選択肢に入れよう。
あらかじめ作戦をたてておくのがいい。

そもそも、「絶対に子供を幸せにできる」という自信のある人なんているのか?
いるとしたら、残念だけどそれは勘違いだ。

出産なんて命がけで自分も死ぬかもしれないし、どんな子供が生まれてくるのかも、
産んでみないとわからない。
子育てもやってみないとわからない。

結婚だって、幸せになる可能性に賭けるからするんだろう。

私は子供を産んで幸せになる可能性に賭けた。
結婚と同じで他人の人生も巻き込むから、可能性を現実にするために必死だ。
ジョジョ5部アニメを見て思った。私には「覚悟」がある。

「覚悟」とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開く事だッ!

ジョルノ・ジョバァーナ(ジョジョの奇妙な冒険)

自分の選択について、私は何も恥じていない。
もちろん、さっきも言ったけど、私とは違う選択をした人のことも尊重している。

これは本当に悲しいことだけど、障碍を持っている人に子供を産むなという人もいる。

なぜ私たちは、家庭環境とか、障碍とか、自分ではどうにもならないことを理由に
他人から幸せの制限をされなくてはならないのだろうか。
話を広げすぎるのも良くないが、LGBTも、今問題になっている人種差別にだって、
私は同じことを思っている。

私は、私の幸せを制限しようとする発言には「NO」を突き付ける。
そんなのはもうたくさんだ。
すっこんでろ。それ以外に言うことはない。

…ないんだけど、やっぱりどこか、放っておけない。
あなたが振り回しているそのナイフ、そのうち自分や大切な人に向けられるよ。

刺される前に気づいてほしい。

じゅりえ

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