カウンセリングで過去の傷と向き合いたい人へ ~じゅりえの体験談~
はじめに
長女が生まれて半年くらい経った頃、私はカウンセリングを受けました。
育児ノイローゼになっていたわけではありません。
虐待をされた人は虐待をしやすくなる、といいます。
親から虐待を受けて育った私は、「自分は虐待をしない」という決意はありました。
でも、決意だけではどうにもならないときもあるかもしれない。
そこで私は、少しでもリスクを減らすために、専門家に分析してもらい、専門家の知恵を借りることにしました。
だけど、たまに調子を崩すことはあるものの、普段は鋼の精神力ですこぶる元気な私には、精神科やカウンセリングルームはハードルが高く…。
勇気を出してすべてを告白したのに、「で?なんで来たんですか?どうしてほしいんですか?」なんて、もし言われた日にはショックで立ち直れない…なんて悩んでいました。(鋼の精神力なのに。でもそれくらい、デリケートな問題ですよね)
そんなある日、精神科受診に関する不安について専門家の方にお話を伺う機会があり、
そこで疑問のすべてをぶつけてみました。
ここでは、そのときに解決したカウンセリングへの不安や、実際にカウンセリングを受けてみたときの体験談をまとめています。
なお、私は大学で心理学を専攻していたとはいえ、ただの素人です。
精神科とカウンセリングルームの違いなど基本的なことは書きますが、その他のところはただの個人の体験談として読んでもらえればと思います。
受診前に専門家の方に聞いたこと
私が相談したのは、長年精神科医を務め、現在は埼玉で精神科クリニックの院長として
働いていらっしゃるプロの方です。
そのときに院長に教えていただいた情報をQ&A形式で以下にまとめます。
<Q1>
私のように専門家の力を借りて過去のトラウマと向き合いたい場合はどうしたら良いでしょうか。
<A1>
臨床心理士によるカウンセリングが有効かと思います。
ただし、内面の深い部分を掘り起こすことになるので、かなり辛い作業となります。
最終的には乗り越えることが可能ですが、一時的に心が不安定となることがあります。
一時的に余計に辛くなるかもしれないこと、時間がかかるかもしれないことを
ご理解いただいた上、それでもいいと思えるなら、受ける価値はあるかと思います。
<Q2>
ときどき出てくる精神的な不調(※)は、どこに相談したら良いでしょうか。
※被害妄想、鍵を執拗に確認する、悪夢を見続けるなど。年に2,3回程度。
<A2>
自分では原因がわからないと思っていても、記憶の底に沈んでいる何かしらの出来事が
顔を出しているのかもしれません。
その部分をはっきりさせるには、やはり臨床心理士によるカウンセリングが有効です。
また、ある程度自分で分析できていることでも、専門的な第三者の目から見ることで
しっかりとした形になりますし、新たな発見がある可能性もあります。
<Q3>
生活に支障が出ていなくても、受診していいんでしょうか?
<A3>
どこからが受診を考えてどこからが考えなくて良いのかの明確な基準は、
病院側もはっきり持っているわけではありません。
困っているのですから、遠慮なく受診して良いと思います。
<Q4>
こんなことで来るなんて、と言われるのが不安なんですが…。
<A4>
確かに、「こんな軽い症状で来るな」なんて言われるのはイヤですよね。
残念ながら実際に医者からそう言われたという話も聞きます。
ですが、たとえ通院するほどではなかったとしても、まずは悩みを整理して
「正常な悩みですので受診しなくて大丈夫ですよ」と病院側は言うべきです。
医者も人間ですから、レベルの高い低い、性格的な相性もあります。
もし嫌な人にあたってしまっても、「こっちからお断り!」くらいの気持ちで
帰ってしまっていいのです。
上記でご回答いただいたことはあくまでもひとりの先生のご意見となりますが、
専門家の方からこのように言っていただけて、私は不安が和らぎました。
精神科、心療内科、メンタルクリニック、カウンセリングルームの違い
精神科、心療内科、メンタルクリニック、カウンセリングルーム…。
いろいろありすぎて、どこを受診すればいいのか迷いますよね。
それぞれの簡単な違いを以下にまとめます。
*精神科
不安やいらいら、落ち着かない、眠れないなどの心の症状を扱う診療科。
薬物療法が中心。精神科医は心の悩みを聞いてくれるわけではありません。
*心療内科
心労による胃痛や倦怠感など、心の問題から引き起こされているからだの症状を扱う診療科。こちらも薬物療法が中心となります。
*メンタルクリニック
精神科と変わりませんが、入院施設の規模が小さいのがメンタルクリニックです。
*カウンセリングルーム
カウンセラーがカウンセリングをしてくれるところで、医療機関ではないので保険が適用されません。カウンセラーを名乗るのには資格はいりません。
カウンセリングを受けたい場合は?
私が精神科の先生からおすすめされたのは臨床心理士による心理カウンセリングでした。
精神科でも臨床心理士によるカウンセリングを受けられるところはありますが、
基本的に精神科は薬物療法となるので、カウンセリングを希望する場合は別途予約する必要があります。
また、医療機関でもカウンセリングは保険適用外(自費)となります。
臨床心理士によるカウンセリングは、医療機関ではないカウンセリングルームでも受けることが可能です。
ただ、カウンセラーは資格を持ってなくても名乗ることができるので、予約をする際には対応してくれるカウンセラーが臨床心理士または公認心理士(※)の資格を持っているか確認することを推奨します。
※公認心理士…2018年から新しくできた心理学系の唯一の国家資格。
私が精神科の先生に質問したのは2017年だったので名前が出てきませんでしたが、
公認心理士ももちろん高い専門性を有した資格です。
私は日常的に困っていることはないので薬物療法は不要と考え、まずはカウンセリングルームで臨床心理士の方に相談することにしました。
カウンセリングルームの料金と回数
カウンセリングの相場は1回あたり5000円~10000円程度です。
回数については、クライアントの症状の程度により当然変わってきます。
参考までに、私が通った地元のカウンセリングルームはベテランの臨床心理士の方が
やっているところで、1回5000円でした。
私の場合は私が考えていたより虐待の程度が深刻だったらしく、
「5か月後の職場復帰までに終わらせたいけど、週一で間に合うかどうか…」と言われ、
20回以上はかかるだろうとの見込みでした。
ですが、私はもともと自分の中で整理が終わっていることも多かったので、実際は初回を含めて5回ほどで終わりました。
ただ、急激に膿を出す感じになってしまい、きつかったです……。
回数については、人によっては1回で終わることもありますし、10回通えばだいたい変わってくることが多いそうです。
途中で調整するので、私のように大幅に回数が変わることもあります。
あとは、クライアントの状況に応じて、カウンセリング終了後も年に1回など定期的に通うこともあるようです。
カウンセリングの流れ
まずは予約をします。
私はメールフォームでの予約だったので、悩んでいることについて簡単に書くところがありました。
初回は、悩んでいることや家族構成や職場環境、病歴の有無などについて聞かれるがまま話していき、今後のカウンセリングのスケジュールを決めます。
2回目以降は初回で話しきれなかったことや、前回のカウンセリングが終わってから思い出したこと、変化のあったことなどを話していきます。
カウンセリングを受けていく中で面談の頻度などは随時調整していきます。
なお、カウンセラーの方は基本的に話を聞くだけです。
「これってこういうことなんでしょうか?」と聞いても、カウンセラー自身の考えを話すことはありません。(専門家としての見解を言うことはあります。)
ただ、この「聞く」ということの中に高度な専門技術が使われています。
なので、「ただ聞いてるだけじゃないか」と思わず、カウンセラーの質問やあいづちを信用して、なるべく素直に話してみてください。
誘導されるまま話しているうちに、重要な記憶が引き出されたり、考えが整理されてくるはずです。
整理して話す必要はまったくなく、良いカウンセラーさんであれば上手に話を聞いてくれるので、思いついたことを自由に話して大丈夫です。
おわりに
プロの方も仰っていましたが、カウンセリングは心の傷と向き合う作業なので、
治療中は家にいるときでもこれまでフタをしていた過去の出来事が急にフラッシュバックして辛い思いをすることがあります。
私はそういうとき、次回のカウンセリングで話ができるように内容を書き留めておくことで、一旦自分の中から切り離すことができ、辛さが和らぎました。
カウンセリングは料金も安くはなく、苦痛も伴います。
そのため、誰にでもおすすめはできませんが、私自身はカウンセリングを受けて良かったと思っています。
私はまだ実母とは縁を切らず、関係を細々と続けていますが、カウンセリング前よりも
落ち着いて対処できることが増え、心の負担は激減しています。
今まで原因不明でときどき出現していた精神的な不調もほぼなくなり、安定した日々を送れています。
何より傷が癒されたことで前よりも自信がつき、自分を認められるようになりました。
「もし虐待したら…」という不安も減ったことで、そりゃあ怒ることはあるものの、
余裕を持って子供に接することができていると思います。
カウンセリングを受けたいけど不安…という人の参考に少しでもなれば嬉しいです。
じゅりえ